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Harris Mountains Helli-Ski 2002/Aug/15(Thu)

【 ハリスマウンテン・ヘリスキー / Harris Mountains Helli-Ski  2002/Aug/15(Thu)


   【時間】 11時頃から14時半頃まで  【天候】快晴・少し曇り  【気温】ブーツの中は冷たかった 
   【用具】サロモン、K2のファットスキー  【リフト待ち】そんなものはない  【同行者】SAK隊員
   【ゲレンデ状況】雨でヘリが飛ばなかったので4日ぶりの新雪だということだった。

朝、準備を済ませて待っていると、ヘリスキー催行の電話が片言の日本語で入った。ホテル前に迎えのバン・タクシーがやって来る。ブラウンズ(レンタルスキー)へ行き、ファットスキーを受け取る。

バン・タクシーはクイーンズタウン飛行場へと向かい、空港の横門からセスナ機の運航事務所に入った。
チェックを済ませて荷物をセスナに積み込む。座席は操縦席の後方になった。しばしの遊覧飛行である。カードローナスキー場やワナカの湖岸のイチョウの大木やMt.クック付近の雪に覆われた岩山を見ながら、タスマン河の岸辺にある自家用飛行場に1時間ほどで到着。

飛行中、見えた雪山には雪崩のデブリが数多く見られ、後の席のガイドも雪崩の跡を気にしていた。着陸直前にはプカキ湖に注ぐタスマン河の河川敷の上を飛ぶ。飛行場周辺は自然に溢れる場所で素晴らしかった。河を越えて対岸に見える台地を馬でトレッキングしてみたいと思う。レストハウスはどことなく羊の匂いがした。

雪崩ビーコンを身体に取りつけ、日本語でのヘリ搭乗の際の説明を受け、1班から順に対岸の雪山にヘリで向かった。

生まれて初めて乗ったヘリコプターだが、乗り心地は快適だった。デルタ地帯の河川敷を越えて台地地帯に入り、禿山のオーバーハングを越えた瞬間、白銀の世界になる。雪崩のデブリも多数見える。

着陸した場所は大雪崩の真横であった。よく観察すると、雪崩発生ポイントは隣の岩山からだったので自分たちの滑るラインは安全だと思えたが、それでも大雪崩の真横を滑るなんて日本では考えられない話だ。

八方尾根の名木・中壁ぐらいの斜面を、まずは一人ずつ滑る。完全な新雪の斜面に不安もあったが、ファットスキーの性能に助けられ、整地斜面と違和感無く滑れた。
ただし距離が長い…。滑り切るとガイドが「OK」と言った。班分のレベルに問題無しと言う事だろう。

前の班がヘリで飛び去るのを見終えてから、自分たちもピックアップエリアで乗り込む準備をした。板を数本まとめて縛る。かなり荒い扱いなのでレンタルスキーで正解だった。ヘリの着陸を待つ間はガイドのリュックに手を当てて動いてはならない。ローターへの巻き込み防止だという。ヘリが着陸する際の風は爆風に近い。
戦争映画のワンシーンのようにヘリに乗り込み、シートベルトを探すが見つからない。装着した後、長さを調節するゆとりも無く次のポイントへ向かう…

次に着陸したのは尾根上の瓦礫6畳ほどのスペースだった。そして今から滑る斜面を見て驚く!こんな斜面は日本では体験した事もない。昨日のリマーカブルズでの急斜面経験が無ければ滑り出せたか?自信が無い。

そんな急斜面だったが、いざ、滑り始めるとファットスキーに助けられ、意外に簡単に滑れた。やや踵荷重のポジションで滑るため、自分自身の斜度は思ったほどではない。切り替え時も斜面に垂直を心がけるが、あまり垂直を意識するとトップが潜り込むため、やはり若干後傾気味に滑るのが正解だった。
ガイドのウィルは高い重心で身体を1本の軸の様に使い、全身で滑っている感じだ。雪面に映る自分の影を見ながら、日本で滑るように少し低めのポジションにしてみたが、状況に合っていないのは明白だった。

次に降り立った所は更に強烈だった。ヘリは雪庇の上に脚をグイグイめり込ませて着陸し、降りた反対側は90°近い崖で下を見ることもできない。滑ろうとする斜面も、これまでのゲレンデスキーの常識を超えていた。
しかし、それでも滑り降りた・・・。

急斜面では、雪崩の危険防止の為、一名づつ間隔を空けて滑るように指示が出る。
滑っている時の感覚は形容し難い…。とにかく滑り切ったが既に足に来ている。

昼食は、パンに生ハムとチーズ・レタスを挟んだだけのサンドイッチだったが、最高にうまかった。サンドイッチを2つ食べ、他はチーズのパイとクッキーを食べた。滑る体力を回復させるには相当時間がかかりそうだ。本心はこのままここでぶらぶらしていたかった。それだけ素晴らしい景色だった。

昼からは谷を変えて移動。太陽の当たる大斜面を滑った。雪質もアイスバーン状である。途端にファットスキーでは滑り難くなった。生まれて初めてのファットスキー、その特性を初めて知る。

視界の下の方にタスマン河が流れている。空を見上げるとダイヤモンドダストがキラキラと輝いている。最後の1本は初めに滑った場所だった。

ガイドのウィルが教えてくれた記録によると、本日の累積滑走標高は約3000mだという。直接の比較はできないが、富士山の山頂から、標高700m付近の御殿場まで滑るようなものである。日本の常識では考えられないヘリスキーの規模と、今まで考えもしなかったスキーの持つ機動力の凄さを、今回、改めて知ることができた。



Schi Heil !!